活動報告(平成29年度女性医師支援事業連絡協議会)

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平成29年度女性医師支援事業連絡協議会

 標記協議会が平成30年2月14日(水)に日本医師会で開催された。山形県医師会からは、間中英夫常任理事と神村裕子常任理事が出席した。

 本協議会は全国の医師会が一堂に集まり、各ブロックの代表が女性医師支援の取り組みについて発表し、女性医師が働きやすい勤務環境になるように議論する場となっている。今回、北海道・東北ブロックの代表として本会神村裕子常任理事が、山形県医師会の取り組みについて発表した。

 日本医師会今村定臣常任理事の開会に始まり、日本医師会横倉義武会長より、近年は少子高齢化、人口減少という大きな課題に直面している。このような情勢のなかで多様な人材が活躍できる全員参加型の社会実現が求められている。我が国において最大の潜在力と言われているのは女性の力であり、十分かつ持続的に発揮される環境を整備していくことが必要不可欠である。医療界においても女性医師数が年々増加しており、その傾向が顕著であることから女性医師の皆様の益々の活躍を期待しているところである。しかしながら一方では、妊娠、出産、育児等により、職を離れざるを得ない女性医師の存在が取り沙汰されている。日本医師会では男女共同参画委員会と女性医師支援センターを両輪として、女性医師がライフステージに応じて活躍できるよう、就業支援やキャリアを継続していくための様々な施策を行ってきた。女性医師の活躍は医療を望ましい方向へ発展するために必要不可欠である。日本医師会としても、その実現のために様々の団体と力を合わせて真摯に取り組みを進めていくので、今後とも各医師会においてもより一層の御協力を賜りたい。との挨拶があった。

以下、議事の内容です。

議 事  

女性医師支援センター事業ブロック別会議開催報告
(各ブロック会議の総括や特徴的、先進的な取り組みの紹介)
① 北海道・東北ブロック(岩手県医師会)
(山形県医師会)
岩手県医師会
スライドに基づき、北海道・東北ブロック各県の取り組みに関して説明。岩手県医師会では専従の育児支援相談員を配置することを検討中である。また、病児保育に関してのアンケートを実施し、その調査結果について説明。

山形県医師会
スライドに基づき、山形県医師会における取り組みに関して説明。女性医師に限らず、医師が就労の問題を抱えた時に医師会が一番力になるべきである旨説明。

② 関東甲信越・東京ブロック(長野県医師会)
スライドに基づき、長野県医師会の取り組みに関して、病児等送迎・保育支援事業等について説明。各都県医師会の取り組み状況の説明。

③ 中部ブロック(石川県医師会)
スライドに基づき、中部ブロック各県の取り組みに関して説明。中部ブロックの今後の展望としてメーリングリストを作成したので、中部7県の情報共有・連携等の強化を図っていく旨説明。

④ 近畿ブロック(大阪府医師会)
スライドに基づき、近畿ブロック各府県医師会の取り組みに関して説明。大阪府医師会の取り組みに関して、院内保育所・託児施設の現況等に関するアンケート調査結果について説明。

⑤ 中国四国ブロック(徳島県医師会)
スライドに基づき、育児と介護に関するアンケート調査結果等を説明。中国四国ブロック各県医師会の取り組みに関して説明。

⑥ 九州ブロック(大分県医師会)
スライドに基づき、復職支援の一環としてお留守番医師制度を設けている旨等説明。九州ブロック各県医師会の取り組みに関して説明。

質疑応答(全体)・総合討論
Q. 地域偏在がいろいろなところで言われているが、家庭を持った医師たちは県庁所在地に集まる傾向にあり、県庁所在地以外の地域では医師不足となり地域偏在が生じるが、どのようにしたら県庁所在地以外の地域でも医師確保ができるか。
A.解決法は自分自身持っているわけではないが、県庁所在地以外の地域で開業しても、県庁所在地から通うというケースもあり、なかなか難しい問題である。

Q.三重県医師会が取り組んでいる、女性医師が働きやすい医療機関認証制度について、これをやることによって退職者が非常に減ったとあるが、認証を取得するような病院は元々ちゃんとしていたのか、それに向けていろいろ取り組んだことで良くなったのか、そういう認証を取得した病院だといろいろな方が来て退職しなくなったのか詳しく教えてほしい。
A. 女性医師に限らず女性が働きやすいという観点なので、看護職、事務職も全て含めて認証している。認証することによって新しく入ってくる人が働きやすさを感じて、今まで働いていた人のモチベーションも一緒に上がっていった。認証は非常に厳しいもので、社労士が先にいろいろな書類を見て36協定がないとか、女性の更衣室はあるが専用の当直室がないなど、なかなか認証が下りない。

Q.追加質問で、例えば追試を受けて合格した病院はあるのか。
A. 今のところない。

Q. 長野県の取り組みで病児の送迎・保育支援事業について、病児保育は受入人数が限られていて、なかなか突然のことに対応してもらえないと思うが、その点はどうなっているのか。大人数受入可能なのか。シッターがそのまま看てくれるというシステムなのか。
A. 長野県は病児保育について力を入れている市が多いが、やはり定員が多いわけではなく、一般の市民の方が個人で契約していることもある。

Q. ファミリーサポーターのところに、送るということもしているのか。
A. 身内ではなく、第3者に頼らないといけない非常事態の時に限ってである。

Q. 例えば小児科にも連れて行ってくれて、そのあとでどこか病児保育やファミリーサポーターに連れて行くことはしているのか。
A. それも契約に入っていればできると思う。医療従事者が働いている病院がどのような契約形態をとるか自由度があるので、それぞれの病院で若干異なると思う。

Q. お留守番医師制度について大変感銘した。東京都でも開業医に在宅医療への取り組みが非常に求められている。在宅の専門医療機関だけでなく、これから在宅医療を始めたい先生方が多くおり、スポットで先生方が勤務するのは大変有意義だと思う。日本医師会の女性医師支援センターでも、4月からスポットの勤務に対して就業のマッチングをする予定である。こういった取り組みは地区医師会だけではなく、行政からの支援も求められるが、熊本県は行政からの支援は受けているのか。
A. 熊本県庁からの寄附講座で地域医療センターが大学内にあり、そこで熊本県の女性医師支援も引き受けている。今回の支援についてはメディッコクラブという託児施設へ無料で預かる費用を県から支援してもらっている。
意見. このお留守番制度は医師会の組織強化を考えるうえでも、開業医の先生はなかなか女性医師支援に関して興味がない先生方が多くいるので、そういった先生方に女性医師支援の一端をお願いすることになると思うので、良い仕組みであり今後取り入れていきたい。

Q. 当直の女性医師で24時間保育を利用している割合を教えてほしい。
A. 臨床病院で大きな病院に行ったアンケートであるが、具体的な数字は把握していないが結構な数の利用がある。
意見. 私の病院では24時間保育のニーズは少なく、女性医師のニーズは当直免除や短時間正規職員制度が高くなる。
意見. 認証制度に関して、認証を取ることが素晴らしい組織作りになり、県も良いがやはり医師会でしっかりルールを作ってやるのが良い。また、認証を取得した病院をメディア等で取り上げてもらうと、他の病院もやらなければいけないと思うので是非発展させていきたい。

Q. 病児保育のアンケートで子どもが病気のときくらいは親が保育すべきという意見があったが、何か方策はあるか。
A. アンケート結果を見て思ったのが、休みを取り易くする環境作りが大事だと思った。それには医師不足解消や、全体の働き方改革というのがやはりもっと進んでいかないと、なかなか休みを取りづらいというのがある。また、保育サポーターバンクを利用するのも良いのではないかと思う。
日本医師会
日本医師会のアンケート調査でも女性医師が求める一番のものが病児・病後児保育の問題だった。次年度のセンターの取り組みとして、この問題を一つの柱としてやっていく考えである。
意見. 大阪は代替要員がなかなかいないので、子供が病気のとき休みづらい。病気のときくらいはやはり親が看たいと思うで、将来的にはそこを目指したい。例えばスウェーデンでは子供が病気になったとき、全国民130日くらい休みが取れるので、病児保育は必要ない。今の日本ではそれは不可能だと思うので、現実的な方策としては、病児保育は非常に大きな助けとなる。
意見. 医師定員の増加がない限り、病児保育の問題は解決しないと思う。
意見. 病児保育・病後児保育は各病院で普及してきているが、設立運営に関しては年間2,000万前後の赤字となっている。長野県医師会の保育サポーターが迎えに行って場所を提供するというのは、新しいアイディアで素晴らしいと思う。ただ、大きい病院はできると思うが、地方の僻地の病院ではなかなかできないと思うので、行政と一緒になって地域の人も含めた形の保育所を作る。また、医師確保基金や地域医療再生基金等から、行政と一緒にやるという試みも始まっている医師会もある。保育サポーターは医師会が中心になってやっていくというのが広がってきており、新しい形の病児・病後児保育の進め方は非常に参考になった。このような取り組みを情報公開して、情報を周知したいと考えている。

Q. 働き方の問題について、国の動きはどのようになっているのか。
A. 具体的にどうしたら良いかというところまではまだいっていない。今回、2年間で専門家が集まった検討会で省令を作って医師の働き方についてはそこで決めていく。医師の労働時間をどうするのか、外したら青天井になるのではないかなどの意見もありつつも、例えば80時間を機械的に当てはめると地域医療に影響がでる。1年後までに結論を出して、決まったことを運用するためには5年の猶予期間を設ける。それぞれの病院が5年間で実施できるように準備をしてくださいというたてつけになっているが、このような大きな話を1年間で決めるのはなかなか難しいので、もう少し時間的な余裕がほしいというのはある。アメリカでは研修医は医師の集団が一定部分を決めて、普通の医師には働き方のルールがない。一方ヨーロッパでは非常に厳しい労働時間の規制があるが、オプトアウト方式で医師と病院経営者とできちんとした協約ができれば、その労働時間は外すことができるという仕組みになっている。日本がどのような方向に向かっていくのかはこれからの話だと思っている。
もう一点、検討会のなかでも申しているが、医療提供者の話だけをしてもなかなか解決しなくて、医療を利用する国民の理解が絶対に必要になる。

閉会 

・標記会議に参加して
間中常任理事
  女性医師支援の各県の取り組みが紹介されましたが、山形県はより積極的に取り組む必要があると思われた。出産・育児のために一定期間病院を離れなければならないのは理解できます。勤続を続ける女性医師について、山形県立中央病院では勤務を継続できるように勤務時間の短縮、当直免除等の制度、また院内保育所を作り、病児でも預けられる体制はできています。一定期間代わりの医師を用意することは困難です。

神村常任理事
 今回話題になったのは、①「女性医師が働きやすい医療機関認定制度(三重)」、②「病児送迎支援事業(長野)」、③「お留守番医制度(熊本)」であった。①②は運営コストがかかる。③はドクターバンクを転用できる可能性あり。山形でも実現できそうである。この会でいつも感じるのは、医師(女性医師)は代わりがいない特別な存在だから支援が必要という強い意識であるが、果たしてそうなのであろうか。私は県予算や助成金頼みならば、一般市民のコンセンサスが得られる事業でなければならないと改めて思った。この点は総合討論の最後の見解に同感である。

当日の各ブロックの発表資料については、日本医師会女性医師支援センターHPから見ることができます。
http://www.med.or.jp/joseiishi/kyougikai_h29.html