インタビュー(県立中央病院:鈴木恵美子先生)

Home  >>  インタビュー(県立中央病院:鈴木恵美子先生)

 

県立中央病院
小児科医長

鈴木 恵美子先生

 

Q 医学部に入学するまでにいろいろな道のりがあったようで。

 山形市出身で、高校は文系を選択しました。その当時は、自分の適性とか進路についてはあまりきちんと考えていなくて、周囲に勧められるままに進路を選択してしまったという感じでした。

 国際関係の官公庁あたりに行きたいなという思いもあり、東京の文系学部に進学しましたが、そこでようやく、自分の適性に気付いたというか、やりたいことが見えました。大学のゼミで青年海外協力隊とかJICAなどの活動を勉強する機会があって、国際保健や保健衛生の分野に興味をもち、そういった世界で活躍するには、やはり医師の資格を持っていないと、なかなか思い通りの事はできないなと。

 そこから、また受験勉強を始めました。最初の大学卒業後も働きながら勉強して、4回目の挑戦でようやく富山医科薬科大学に入学することが出来ました。富山医科薬科大学を受験したのは、受験科目上、自分のような文系出身でも入学し易いというところが大きな理由です。

 

Q 現在は県立中央病院で小児科医をされておりますが。

 医学部を目指して受験勉強をする傍ら、塾講師などをしていましたが、その際に、子ども相手が向いているのかなと思いまして。

 卒業後は富山医科薬科大学で小児心臓外科を中心に3年ほど研修をしていましたが、いずれ山形に戻りたいと考えていた折、宮城県立こども病院が開院し、地元も近いので、そちらに異動しました。こども病院で研修していた際、県立中央病院の小児科の先生からお誘いをうけ、平成18年10月から、県立中央病院で勤務させて頂いております。

 

Q 小児科医として、母親として、妻として、非常に御多忙だと思いますが。

 病院勤務医ですので、通常の勤務時間のほか当然当直などもありますし、加えて家族の御飯作ったり洗濯したりしていると、こんな生活続けられるのかなと不安になるときも多々あります。でも、ここまでがんばってきたので辞めるのは悔しいという思いもあり、続けているのだと思います。

 

Q 後輩の女性医師や女子医学生へのアドバイス等頂ければ。

 自分が医学部に合格し医師になったことで、医師への思いを断念した人が1人いるんだということを忘れないでください。そういった方々への思いに応えるためにも、医師としての仕事を続けてほしいです。

 高校生くらいから、将来のキャリアプランの教育や情報提供が必要だと思います。出産等を考えているなら何歳で産んで、専門医の資格は何歳でとってという様に、具体的なシミュレーションを行うことが重要です。

 女性医師の離職理由として夫の転勤というのが結構多いのですが、私の夫のように自営業ですと転勤もなく、医師としての仕事を続けられ易いので、自営業の夫はお勧めです。

 女性医師が育児のために仕事をセーブする間の生活やキャリアを支えてくれているのは、周囲の先生方のお蔭だということをしっかりと自覚して、感謝の気持ちを忘れずにいて欲しいと感じています。お互いが気持ちよく働くことができれば、職場の空気も明るくなり、今現在パートや非常勤でも、いつか常勤で復帰したいというモチベーションにもつながるのではないでしょうか。

 ほとんどの職場は、医師の数には上限があり、その中で時間に制約がある方が多ければ多いほど、夜間休日の日当直オンコール勤務は残った医師で回さなければなりません。そのため、女性医師支援・子育て支援を前面に出せば出すほど、病院全体の医師数は多いのに、実際に働く人の数は少なく、現実には男性医師や独身の女性医師に、心身ともにとても多くの負担がかかっているということは、あまり知られていないような気がします。

 支える側が疲れ切ってしまうと、それはそれで、男女関係なく、過労での離職につながってしまうような心配があります。行政の方々には、何らかの制度的なサポートがあれば、ぜひ考えて頂ければいいなと思います。各種支援制度がうまく機能し、子育てしているとか独身だとか性別だとかにかかわらず、みんなが活き活きと活躍できるのが理想かな、と願っております。

 私自身いろいろ困難な状況もありましたが、山形に戻ってきてからは、各種支援制度や職場の方々のサポートで大変助けられ、そのおかげでこうして今も医師を続けていられます。いくら感謝してもしきれないという気持ちは、ぜひ皆さまにお伝えしたいと思います。