山形県立新庄病院 小児科
本間 友美先生
インタビュアー
橋爪 英二先生(山形県医師会副会長)
Qプロフィール
山形市出身。山形大学医学部を卒業後、同大学小児科に入局。山形大学医学部附属病院、山形市立病院済生館、米沢市立病院、日本海総合病院などで研鑽を積み、平成18年より山形県立新庄病院小児科に勤務。現在は小児科3人体制の中で、一般小児診療に加え、医療的ケア児に対する医療などの診療にあたっている。
【キャリアについて】
Q医師を目指したきっかけを教えてください。
医師を志した明確な出来事が、当初から強くあったわけではありません。振り返ってみると、小学生の頃から、家族が病気になり自宅で介護を受けている様子を身近に見てきたことが、心の奥底に残っていたように思います。
高校生になる頃、「人の役に立つ仕事に就きたい」という思いが次第に明確になり、医療系への進学を考えるようになりました。
学びを重ねる中で医師という職業の奥深さに触れ、医療を通して人に寄り添う仕事を続けていきたいと考えるようになりました。
Q小児科を専攻した理由、特にやりがいを感じる瞬間を教えてください。
医学部入学当初から小児科を強く意識していたわけではなく、臨床実習で様々な診療科を回る中で、自分の進む道を考えていきました。外科よりも内科系、成人医療よりも子どもを対象とした医療の方が、自分の性格や価値観に合っていると感じるようになり、小児科を選択しました。
現在は一般小児診療を中心に診療を行っていますが、その中でも、てんかんや障がいをもつお子さんなど、小児神経分野の患者さんを診る機会が多くあります。新生児医療に関わる中で、治療後も長期にわたりフォローが必要となるお子さんと出会い、成長や発達を継続して見守る診療に携わりたいという思いが強くなりました。
小児科では、診療の際に泣かれてしまうことも少なくありません。しかし、通院を重ねるうちに医師やスタッフの顔を覚え、最後には笑顔で「バイバイ」と手を振って帰っていく姿を見ると、小児科ならではのやりがいを実感します。
また、子どもは状態が急激に悪化することもありますが、治療が奏功し、短期間で元気な姿を取り戻す様子を見ることは、医師として大きなやりがいにつながっています。
一方で、慢性疾患を抱えるお子さんの場合、外来で長く関わりながら、その子の成長や生活の変化を見守っていくことになります。発達していく姿を家族と一緒に喜べることは、大人の医療とは異なる小児医療の大きな魅力だと感じています。
ただし、すべての患者さんが回復に向かうわけではなく、救えない命や、治療の限界に直面する場面もあります。そのような時は大きな心の負担を感じますが、その経験を次の患者さんの診療に生かし、同じ思いを少しでも減らすことが、医師としての責任だと考えています。
Q医学部や研修時代の思い出、苦労した点などを教えてください。
私が研修医だった頃は、現在のようなローテーション中心の研修制度とは異なり、入局後すぐに小児科医としての診療が始まる時代でした。
1年目は、点滴や採血などの基本
的な処置を繰り返し経験し、できるようになるまで何度も実践させてもらいました。当時は大変だと感じることもありましたが、その積み重ねが現在の日常診療の基礎になっています。
2年目には全館当直として救急外来にも対応しました。小児科しか経験のない立場で、内科や外科など幅広い救急患者を診なければならず、不安や戸惑いの連続でした。各科の先生方に電話で相談し、時には直接来ていただきながら、少しずつ対応できるようになっていったことを覚えています。
現在の研修医は、各診療科を幅広くローテーションしたうえで当直に入ることができるため、とても恵まれた環境だと感じます。当時を振り返ると、「もう少し経験を積んでから当直に入りたかった」と思うこともありますが、厳しい環境の中で多くを学ばせてもらったことは、今となっては貴重な経験です。
【職場環境について】
Q現在の一日のスケジュールを教えてください。
現在勤務している山形県立新庄病院小児科は、3人体制で診療を行っています。入院患者については主治医制をとらず、チームで情報を共有しながら診療にあたる体制を整えています。
朝は8時半頃から病棟回診を行い、9時からは外来診療が始まります。午前中は一般小児外来や病棟業務を担当し、風邪や胃腸炎などの急性疾患の患者さんが多く来院されます。慢性疾患の患者さんの中には、午前中の受診を希望される方もおり、状況に応じて対応しています。
一方、病棟担当となった日は、午前中は入院患者さんのカルテ入力や採血などの処置を行います。また、当院で生まれた新生児の診察は午前中に行うことになっており、新生児の診察に加え、各種検査結果の説明なども行っています。
午後は一般外来を行わず、てんかんや医療的ケアが必要なお子さん、喘息など慢性疾患をもつ患者さんの予約診療を中心に行っています。また、1か月健診や予防接種など、予約制で行う診療も午後にまとめています。
16時頃からは各種会議に出席し、その後もう一度病棟を回診します。17時頃までには業務を終えるよう努めていますが、時間外対応当番にあたる際には、急患や入院対応により帰宅が遅くなる場合があります。
また、当院は救命救急センターを有しており、救急搬送患者の受け入れも多い病院です。平日の日中は救急科の医師が救急外来を担当し、子どもの患者さんについて入院が必要な場合や専門的な対応が必要な場合には、小児科へ連絡が入り対応しています。
夜間や休日には、診療科を問わず当直体制が組まれており、小児科医も当直に入っています。第1当直、第2当直、ICU当直など役割分担はありますが、若手医師から副院長まで幅広く当直を担い、小児科当番に加えて全館当直も担当しています。
【ワーク・ライフ・バランスについて】
Q医師として仕事とプライベートのバランスをどのように保っていますか。
上の立場になった今、「定時で仕事を終える姿勢を示すことも大切な役割の一つ」と考え、日中の業務を効率よく進め、17時過ぎには仕事を終えるよう心がけています。ダラダラと業務を続けるのではなく、時間内に集中して仕事をすることを意識しています。
ただし、患者さんの状態が気になると、当番でなくても病院に足を運んでしまうことがあり、自分自身では「うまくバランスが取れているとは言えない」と感じています。平日はどうしても仕事が中心になりがちですが、休日は当番医に任せ、なるべく病院から距離を置くようにしています。
Q健康を維持するために取り組んでいること、ストレス解消法はありますか。
休日は、掃除や洗濯、買い物など、平日にできない家事を済ませることが多く、特別な趣味があるわけではありません。天候が良い日は散歩したり、テレビや動画を見て過ごしたりしています。
また、週1回ヨガ教室に通い、体をほぐす時間を大切にしています。その時間は仕事のことを考えず、心身ともにリラックスできる貴重な時間となっています。無理をせず、自分のペースで続けられることを意識しながら、健康管理と気分転換につなげています。
【医師としての今後の展望】
Q地域医療の現状や医師偏在について、現場で感じておられることはありますか。
最上地域では、小児科に限らず、全体的に医師数が少ないという課題があります。小児科専門の開業医は新庄市内に2件のみで、休日診療所においても、他地域のように小児科医が小児科のみを担当する体制を取ることが難しい状況です。そのため、休日診療所では内科・小児科を問わず一人の開業医が診療にあたり、重症例については救急外来と連携しながら病院が対応する体制を取っています。
具体的には、軽症の患者さんは開業医が診療し、入院や救急対応が必要な重症例については病院が受け持つという役割分担が、同じフロア・同じ検査設備を共有する中で形成されています。地域全体として医師が不足している中で、開業医と病院医師が互いに補い合いながら地域医療を支えているのが現状です。
今後については、小児科医だけでなく、内科や外科を含めた幅広い診療科で医師が増えていくことが望まれます。都市部と地域を行き来するような仕組みづくりや、地域医療の魅力を伝えていくことで、地域に関心を持つ若い医師が増えていくことが重要だと感じています。特に、地域で研修を行う研修医一人ひとりを大切に育てていくことが、将来的な地域医療の継続につながると考えています。
Q今後のキャリアビジョンや目標はありますか。
下の世代の医師がしっかり休みを取りながら働ける環境を整えることも、今後の自分の役割の一つだと感じています。自分自身はこれまで長年にわたり、当直や救急対応を含めたフルタイム勤務を続けてきましたが、働き方改革が進む中で、今後は時間外勤務の少ない働き方への移行も視野に入れています。年齢や体調の変化を踏まえながら、無理をせず、長く医師として働き続けられる形を模索していきたいと考えています。
Q若手医師、医学生へのメッセージをお願いいたします。
若手医師や医学生の皆さんには、「女性だから」「男性だから」といった理由で、自分の可能性を狭める必要はないと伝えたいです。医師の働き方には、フルタイム勤務だけでなく、時短勤務や一時的な休職、復職など様々な選択肢があります。
特に若い世代ほど、利用できる制度や支援策を十分に知らないまま、不安を抱えてしまうことが多いと感じています。困ったときには一人で抱え込まず、周囲に相談することで、支えてくれる人や仕組みは必ずあります。
また、支援を受けた経験は、将来必ず次の世代を支える力になります。支援する側とされる側が循環し、お互いに支え合う環境があってこそ、医療現場は成り立ちます。自分に合った働き方を見つけ、できるだけ長く医療に携わっていってほしいと願っています。



