インタビュー(さとう花の森呼吸器内科クリニック:佐藤 千紗先生)

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さとう花の森呼吸器内科クリニック(山形市)

佐藤 千紗先生

インタビュアー:間中 英夫先生(山形県医師会副会長)

 

Q医師を目指したきっかけを教えてください。

 小さい頃から小児喘息があり、2歳くらいから入退院を繰り返していました。夜中に発作を起こしてそのまま入院しての繰り返しで、病院にはとてもお世話になりました。その頃、小さいながらも小児科の先生に憧れみたいなものもあって、中学生の頃から本格的に医者になりたいと思うようになりました。

Q研修医時代のことを教えてください。

 私は山形済生病院の初期研修医1期生でした。私の頃もローテーションでしたが、当時はとても厳しく、あまり診療科を選ぶ余地がありませんでした。産婦人科、小児科、心臓血管外科、整形外科もまわってという感じでびっしり細かくというスタイルでしたが、とても勉強になりました。
研修先の山形済生病院では、同期が私含めて二人しかいなかったので、その分たくさん手技もさせていただきました。

Q呼吸器内科を選んだきっかけを教えてください。

 実は最初から呼吸器内科医になりたいと思っていたわけではなく、ずっと産婦人科医を希望していました。当時、産婦人科の女性医師があまりいなくて、女性医師に診てもらいたいと思う患者さんも多くいるのではないかと思い、産婦人科医を志していました。山形に帰って来てからも、お産件数が多い済生病院に行こうと思い、初期研修医で入ったのですが、その時の呼吸器内科の先生方がすごく一生懸命で、その先生方の影響を受けて呼吸器内科を選びました。女性内科をやりたいという思いもあり、それだったらしっかり内科を勉強しようと思い、呼吸器の道へ進むことになりました。

Q開業しようと思った一番の理由は何ですか。

 医者になった時から、いつかは開業して自分自身で経営したいとずっと考えていました。両親が会社を経営しており、その姿を見てきたので、その影響もとてもあると思います。

Q開業するにあたって大変だったことは何ですか。

 とにかくわからないことばかりで全部が大変でした。たくさんの方のお力をお借りして開業に至りましたが、特に医療機器メーカーさんには、開業のノウハウを教えていただきました。候補地についても医療機器メーカーさんにいくつか候補を挙げていただいたのですが、この場所は自分で探してきました。以前勤務していた済生病院も近かったこともあり、とても良い環境で開業できたと感じています。冬は患者さんが転んで怪我をしないように、駐車場は奮発して融雪にしました。

Q勤務医時代と開業してから一番違いを感じることは何ですか。

 勤務医時代は正直、診療だけやっていれば良かった感じはありますが、開業してからは経理やコスト管理や機材など、今までやったことがなかったことが診療と同じくらいの比重であって、そこが一番慣れていないので、大変さを感じています。あとは、スタッフの方々が働きやすい環境にすることを常に考えています。

Q訪問リハビリテーションについて教えてください。

 慢性呼吸器疾患の方は、特にエネルギーを消耗しやすく、日頃からの呼吸器リハビリ、栄養療法が重要と考えています。外来診療の中でも、自宅で必要な方に必要なリハビリテーションを提供したいと思い、訪問リハビリテーションを開設しました。スタッフはPT3名とST1名の4名がいます。とても信頼できるスタッフです。今は脳梗塞後の方が多くいらっしゃいますが、ゆくゆくは呼吸器リハをする方を増やしていきたいと考えております。

Q子育てで工夫していること、苦労していることは何ですか。

 今はもう中学生と小学生になったので、あまり手がかからなくなりましたが、小さい頃は、よく熱が出て呼び出されていました。当時は病児保育がなかったので、やはり子供が熱を出した時が一番大変だったと思います。また、夜のオンコールで呼ばれることが多かったので、夫に子供を任せることが多かったです。夫は同業者ではなかったので、私は出勤して、夫に休みを取ってもらうことが多く、夫にはとても感謝しています。
今は病児保育の施設もあり、オンコール免除など環境的には改善されてきているとは思いますが、働き方の選択肢がもっと増えるといいなと感じています。子育て中の医師が安心して働ける環境整備を進めていただければと思います。

Q休日はどのように過ごされていますか。

 ストリートダンスをしています。子供が始めたのをきっかけに始めました。ヒップホップ、ロック、ジャズなどのレッスンを受けています。まだ上手には踊れませんが、仲間と一緒に躍るのはとても楽しいです。そして、日々の運動はとても大切だと感じております。

Q女性医師が活躍するために大事なことは何でしょうか。

 キャリア形成を考えた時、出産・育児のことで悩んだりすることが多いと思います。復帰した時に、育児、家事、仕事を全部一人でやりくりすることはとても難しくて、家族内の協力に加え、所属している病院、診療科の先生方に働き方について相談することが大事かなと思います。家庭と職場の両方で応援、協力を得られることがドロップアウトせずに仕事を続けられるポイントかと思います。
私は済生病院で研修医第1号でした。育休をもらって育休明けに復帰する女性医師としても初めてだったので、産後の働き方、当直の免除などについては、私が病院と交渉しなくてはなりませんでした。もちろん当初は当直免除という規程もなかったですし、オンコールもありましたので、全部自分で交渉しないといけなくて大変だったのを覚えています。診療科の先生方の理解と、夫や両親の協力があったので、ここまで続けてこられたと感じています。

Q若手女性医師、女子医学生へのメッセージをお願いいたします。

 医師を続けていくうえでいろいろ悩んだりすることがあると思いますが、悩んだ分だけ良い未来が開けるのかなと思います。どんどん先輩たちに意見を聞いてもらえればと思います。交流できる場があれば良いと思いますし、もしそのような場があれば私自身お役に立ちたいと思っています。

Q開業を考えている女性医師へのメッセージをお願いいたします。

 女性医師は、育児+家事+仕事という、人生において濃厚な時間のやりくりを経験していることから、いろいろなやりくりが得意な先生が多いと思います。
開業は、やりくりの力を発揮できる場が多く、女性医師の先生方にぜひ、開業目指しチャレンジしていただきたいです!
女性の患者さんは特に、女性の先生に診てもらいたいと思っている方も多いので、女性医師の開業医としての需要もとても大きいと思っています。
私のクリニックに来てくださる患者さんの3分の2は、女性の患者さんです。
山形に女性の開業医の先生の仲間が増えてくれたら、とても嬉しいです。

Q将来の目標を教えてください。

 私は勤務医時代、NST(Nutrition Support Team)というチーム活動を行っていました。管理栄養士、医師、看護師、薬剤師、言語聴覚士、検査技師などのチームで活動します。
研修医時代からお世話になっていたオーベンの先生に、栄養療法の重要性を教わり、急性期、慢性期いずれの患者さんで、適切な栄養療法について介入することが重要だと実感しました。
そしてそれは、退院してからも、体力回復が十分でない患者さんに対しては継続していく必要があると感じています。地域NSTのような、職種、事業所を越えて、地域全体で患者さんに関われるようなチームを作り、山形から発信していくことが目標です。